初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜




「飲んで忘れようなんて言ってアレだけど」
「え、なに?」
「香苗はさぁ……別れないの?」
「ああ、うーん……」
「ほぼ家に帰って来なくて態度も悪いんでしょ? 香苗も病んじゃってるし」
「……まぁ、そうなんだけど。気持ちが追いつかなくて。こうなるまでは、本当にいい人だったから」
「けどさー、今は違うんでしょ? もっと視野を広く持とうよ。時間が勿体無いよ」
「……分かってはいるんだけどね」



 友人が私を心配してくれているのは分かってる。
 けど、そうは言われても気持ちの切り替えは容易くない。長く付き合えば付き合うほど、好きになればなるほど。


 曖昧に笑う私を見て、友人はあからさまに唇を尖らせる。



「けど、どんどん顔色悪くなってくの見てるだけなのも嫌だから、これからは何かあったらもっと話してね?」
「うん。……ありがとね」



 優しい言葉が嬉しくて照れながら微笑むと、友人は安心したように息を吐き、カクテルを飲み干した。


 その時、店の入り口が開き男性客二人が入ってきた。
 店員に案内されこちらに歩いてきて、そのうちの一人が友人を見て声を上げる。