初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜





 初夏になっても、私と彼の関係は変わらなかった。



「香苗、今日飲みに行こう」
「え」
「最近、いくらなんでも暗すぎ。気分転換しよう」
「いや、ちょっとそんな気分には」
「気分とか気分じゃないとかどうでもいいから、酒飲んで少しでも今の自分の状況忘れて楽しもう! それじゃあ約束だからね!」



 ここ最近、態度に出さないよう努力はしていたが友人には気付かれていたらしい。
 次の講義がある友人は、ビッと私を指差すとそのまま人の流れに乗って講義室から出て行ってしまった。

 
 断ろうと思ったのに、強引に押し切られポカンと口を開く。
 けど、友人の言う通り、お酒を飲めば辛いことも少しは忘れられるかもしれない。
 常に同じ学内の彼氏の動向を気にして、心を疲弊させているのもよく考えたら馬鹿らしい。


 気持ちを切り替え、そうと決まれば店選びだ。
 スマホをタップし、めぼしい店を調べて友人に送りながら、思考は夜の楽しみへと向かっていった。