窓の外は雨。

夏休みが始まり、本当は今日、愛子と動物園に行く予定だった。

しかし、雨天中止ということにしていたので、珍しく今日は別々だ。

リビングに行くと、今日は休みの母親がトドのように横たわり、煎餅を齧りながらテレビを見ていた。

仕事の日は、ちょっといいスーツでビシッと決めているが、休日は本当にだらしない。

「父さんは?」

「今日も仕事よ」

「なんだ。休みなら、モールまで乗せてもらおうと思ったのに」

部屋に戻ろうとすると、

「そうそう、優一」

母が財布からお金を取り出す。

「えっ、小遣いくれるの?」

「違うわよ。いい加減に髪切りなさい」

「えー…」

正直、気が進まない。

「愛ちゃんに会えるし、好都合でしょ?」

「愛子の部屋ならいいけど、店のほうはなぁ…」

そう言うと、母親は顔色を変えて、

「部屋はいいけどお店は嫌って…。アンタ!まさか愛ちゃんによからぬことしてるんじゃないでしょうね!?いくら長い付き合いとはいえ、あの子を傷物にしたら、松岡さん一家に顔向け出来ないわよ!」

傷物って…。

まぁ、ちょっとだけなら、よからぬこともしました…などと言えるはずもない。