時折、こんな風に愛子の家で夕飯をご馳走になることがある。

愛子のようにわかりやすく嬉しそうな顔はしないものの、本音を言えば、愛子以上に僕のほうが嬉しいに決まっているのだが。

食卓には、今日も大家族が揃って賑やかだ。

松岡家は現在、お祖母さん、伯母さん、ご両親、お兄さん二人、愛子の7人家族である。

伯母さんの娘、つまり愛子の従姉にあたる人は、恋人の転勤が決まった時、電撃結婚をしてこの家を出ていった。

その従姉は、愛子が小学生の頃からこの家で同居していたので、愛子にとっては実の姉同然の存在だったという。

愛子は、家族の前では結婚を祝福していたが、実は、従姉が遠くへ嫁ぐことを知った直後、珍しく真っ赤な目でうちに駆け込んできて

「喜ばなきゃって、頭ではわかってるのに…すごく寂しい。お姉ちゃん、行かないでほしいよ…」

そう言って、幼い子供のように、僕の胸で慟哭していた夜を思い出す。

愛子と付き合い始めて数ヶ月後のことだった。