「それで……なんで宇山と2人でいるん?」

自主練を再開した悠斗を二人でベンチから眺める。

持ってきてくれたアイスのカップを開ける。

中身は全く溶けていない。

私の家の最寄り駅にあるコンビニで買ってくれたのかな。

こんなに暑いのに溶けていないということは、かなり急いできてくれたのかな。

「『宇山の彼女に悪いから宇山と2人では会わん』みたいなこと言ってなかった?」

「ああ、うん。そうだよ」

私は口の中で堪能していたアイスクリームを飲み込む。

鼻から、ふわっとキャラメルの甘い香りがした。

「別れたんだって」

「え?」

「悠斗、彼女と別れたんだって」

少しの沈黙の後、宮本くんは「なんで!?」と、こちらがびっくりするほどの大声で叫んだ。

「……さあ?」

本当は知っているけれど、それは私から言うべきことではない。

悠斗だって、自分の恋愛事情を、それほど仲のいいわけではないクラスメイトに話されるのは嫌だろう。

だから私は知らないフリをした。

「まあ、付き合ってみたら、色々あったんじゃない?」

「……色々って?」

「わかんないよ、私も」

色々聞きたそうにしている宮本くんに、「私も別れたことしか聞いていないから」と伝え、追加の質問が来ないように牽制した。

「マジかあ……」

「うん、本当みたい」

「……また、宇山のこと追いかけるん?」

いつになく真剣に尋ねた宮本くんの質問に、私はアイスを食べる手を止める。

「私は」

どうするんだろう。わからないな。

悠斗とはこれからも一緒にいたい。けれど、それはあくまできっと、“幼馴染”として。

さっき自然と出た“好きだった”という言葉が、今の私の本心だから。

ただ、これからのことはわからない。

悠斗のことを好きになったのだって、突然だったから。
悠斗のことを好きだったと思ったのだって、突然だったから。

「ねえ、宮本くん」

彼からの質問は答えず、逆に私は彼に問いかける。

お昼に鈴ちゃんと話してから、何故かずっと気になっていたことを。