“誕生日だから”という理由で、家まで送ると言い張る宮本くんと、島を出る前にカフェで買ったカフェラテを飲みながら、家までの道をゆっくりと歩く。

「……なにかお返ししたいなあ」

唐突に言い出した私に、宮本くんは「何の話?」と尋ねた。

「いや、今日楽しかったからさあ、なにか宮本くんにお返しできないかなあって。プレゼントももらったし」

「ああ、そういうこと?」

それなら、と言う彼に、「課題ノート見せて、とかはダメだよ?」と先手を打つ。

「……チッ」

「うわ、やっぱりそうだったんだ」

「バレたかあ」

二人でケラケラ笑う。

今日一日で、どれだけ笑ったんだろう。

こんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。

「それなら」

口元に笑みを残しながら、宮本くんが私を見る。

「10月11日、あけておいて?」

「10月11日……?」

特定の日をあげられ、なにかあったかな、と私は首を傾げた。

「俺の誕生日やねん」

「え、10月11日?」

「うん」

あっけらかんと彼は答える。

自分の誕生日なら、もっと一緒に過ごすのに適切な人がいるだろう。

家族とか、いつも一緒にいるバスケ部の友達とか、他にもきっと。

「……でも、それなら」

「別に祝ってほしいとかじゃないねん」

彼は私の言葉を遮った。

「ただ、ほら……高校生になって家族と過ごすのもイマイチっていうか、だからといって友達にわざわざ祝ってもらうのも恥ずかしいっていうか、まあ、とりあえず、お前の誕生日祝ってんから、俺の誕生日に一緒に過ごすぐらい、別にいいやろ」

そういうものなのだろうか。

私は友達に祝ってもらうのでも嬉しいし、家族に祝ってもらうのでも嬉しい。

だけど、男の子には男の子なりの事情や考えでもあるのかな……。

「わかったよ。あけておく」

「うん、別になにかプレゼントを用意してほしいとか、そういうのじゃないから」

「……それはそういう振り?」

「違うわ!」

関西人らしい、テンポの良い返しに、私は声を上げて笑った。

「まあ、覚えておく」

「どうも」

彼の誕生日、どうしようか。

そもそも平日なのかな。

もし休日で部活が無ければ、どこか出かけようと誘ってみようか。

今日、私も連れ出してもらって、凄く楽しかったし。

宮本くんって何が好きなんだろう。

仲良くなったのはつい最近だから、私は彼のこと、まだ何も知らない。