「じゃあ、気をつけて」
「うん、まあもうここだけど」
「そうやな」
あれから少しの間泣き続けた私の傍に、宮本くんは文句ひとつ発することなく居続けてくれた。
そして「ついでやから」と言いながら、結局家の前まで送ってくれたのだった。
「ありがとうね……本当に」
「もういいって。何回お礼言えば気が済むねん」
宮本くんが苦笑する。
けれど、何回言っても言い足りない。
今日は本当に宮本くんの存在に、救われたから。
「……実は私、明日誕生日なんだ。もし今日宮本くんが側にいてくれなかったら、きっと一人で抱え込んで落ち込んで、最悪の誕生日になっていた。だから本当に、救われたよ、一緒にいてくれて」
「え、待って? 明日誕生日なん!?」
宮本くんは私の言葉に被せるように、いつもに増して早口で尋ねた。
「うん、そうだけど」
平然と答えると、「なんでもっと早くに言わんねん!」と言われ、その勢いに私は少しだけ驚く。
「知ってたら、もっとちゃんとしたお店連れて行ったのに!」
「いや、いいよ。アイス買ってくれて、話聞いてくれて、十分すぎるよ」
本心だった。
別にお店に連れて行って欲しかったわけじゃないし、むしろ今日は人目を気にしない場所の方が有り難かった。
「もう、ほんまにお前って奴は、なんというか……」
宮本くんは困った表情を見せた後、「そうや」と続けた。
「明後日の午後、なにか用事ある?」
「明後日? 日曜日の午後?」
「うん。明日は一日中部活なんやけど、日曜日は午後から部活休みやから、どっか出かけようや」
お誕生日祝いで、うまいもんでも食わしたる、と宮本くんが笑った。
「いやいや、いいよ。今日、十分付き合ってもらったし」
流石に休みの日まで私のために時間を使ってもらうのは、忍びなかった。
「なにか予定あるん?」
「……いや、うん、まあ、ある」
「絶対嘘やん」
お前ほんまに嘘つくの下手やなあ、とケラケラ笑う。
「決まりな。日曜日、部活終わったら連絡するわ。最寄り駅まで迎えに来る」
「え!? 最寄り駅って、私の家の?」
「うん、家まで来た方が良い?」
「いや、十分! というか、本当に出かけるの?」
「当たり前やん。お誕生日祝いと失恋の慰めということで、うまいもんおごったるから!」
「……後半の言葉は聞かなかったことにしておくね。お誕生日祝い、ということでよろしく」
私の言葉に、宮本くんは白い歯を見せると、「了解」と告げた。
「そういえば、私、宮本くんの連絡先知らないかも」
「あ、確かにそうやな。交換しよか」
彼から差し出された連絡先を読み取ると、連絡先一覧の一番上に、“宮本 光希”と名前が表示された。
「うん、まあもうここだけど」
「そうやな」
あれから少しの間泣き続けた私の傍に、宮本くんは文句ひとつ発することなく居続けてくれた。
そして「ついでやから」と言いながら、結局家の前まで送ってくれたのだった。
「ありがとうね……本当に」
「もういいって。何回お礼言えば気が済むねん」
宮本くんが苦笑する。
けれど、何回言っても言い足りない。
今日は本当に宮本くんの存在に、救われたから。
「……実は私、明日誕生日なんだ。もし今日宮本くんが側にいてくれなかったら、きっと一人で抱え込んで落ち込んで、最悪の誕生日になっていた。だから本当に、救われたよ、一緒にいてくれて」
「え、待って? 明日誕生日なん!?」
宮本くんは私の言葉に被せるように、いつもに増して早口で尋ねた。
「うん、そうだけど」
平然と答えると、「なんでもっと早くに言わんねん!」と言われ、その勢いに私は少しだけ驚く。
「知ってたら、もっとちゃんとしたお店連れて行ったのに!」
「いや、いいよ。アイス買ってくれて、話聞いてくれて、十分すぎるよ」
本心だった。
別にお店に連れて行って欲しかったわけじゃないし、むしろ今日は人目を気にしない場所の方が有り難かった。
「もう、ほんまにお前って奴は、なんというか……」
宮本くんは困った表情を見せた後、「そうや」と続けた。
「明後日の午後、なにか用事ある?」
「明後日? 日曜日の午後?」
「うん。明日は一日中部活なんやけど、日曜日は午後から部活休みやから、どっか出かけようや」
お誕生日祝いで、うまいもんでも食わしたる、と宮本くんが笑った。
「いやいや、いいよ。今日、十分付き合ってもらったし」
流石に休みの日まで私のために時間を使ってもらうのは、忍びなかった。
「なにか予定あるん?」
「……いや、うん、まあ、ある」
「絶対嘘やん」
お前ほんまに嘘つくの下手やなあ、とケラケラ笑う。
「決まりな。日曜日、部活終わったら連絡するわ。最寄り駅まで迎えに来る」
「え!? 最寄り駅って、私の家の?」
「うん、家まで来た方が良い?」
「いや、十分! というか、本当に出かけるの?」
「当たり前やん。お誕生日祝いと失恋の慰めということで、うまいもんおごったるから!」
「……後半の言葉は聞かなかったことにしておくね。お誕生日祝い、ということでよろしく」
私の言葉に、宮本くんは白い歯を見せると、「了解」と告げた。
「そういえば、私、宮本くんの連絡先知らないかも」
「あ、確かにそうやな。交換しよか」
彼から差し出された連絡先を読み取ると、連絡先一覧の一番上に、“宮本 光希”と名前が表示された。



