「あ、青になったよ!」

横断歩道の白色の部分だけを歩くように渡ると、「子どもか」とツッコまれる。

今思えば、宮本くんって、本当にツッコミ多いな。関西人は、普段の会話でもみんなこんな感じでツッコミを入れるものなんだろうか。

「ねえ」

「何?」

「宮本くんって、関西で育ったんだよね? 何年ぐらい住んでいたの?」

「えーっと、生まれてすぐに引っ越して、小四の途中までいたから……約十年ぐらいかな。なんで?」

「いやあ、ツッコミ多いなあと思って。関西人はみんなそんな感じなの?」

「ツッコミ多いか? まあ、でも関西人はみんなこんな感じちゃう? 俺はその中でもおもろい方やろ思うけども」

「へえ」

「おい、お前から聞いておいてどうでもいいような返事するなよ」

パシッと頭を叩かれる。

「ごめんごめん、アイス楽しみだなあって思ってさ」

「何味にするん?」

「うーん……」

何味を食べようかな。

暑いからさっぱりとする味が食べたいな。
パッションフルーツとか、マンゴーとか……抹茶もいいかも。

最後は直感で決めようかな、そう思った時、隣にいた宮本くんが、「やっぱりやめよう」と言い出した。

「え、どうして?」

目の前にコンビニがあるのに。

「どうしても。ここのコンビニで買う気分じゃなくなった」

「ええ、なにそれ」

「いいやん、ほら、駅の前のコンビニで買ってあげるから」

不満そうな私を、宮本くんはたしなめる。

「駅の前のコンビニで買ってくれるんだったら、ここでいいじゃん」

駅前のコンビニはここより店内は狭い。

絶対このコンビニの方が味の種類が豊富なのに。

「別に駅前のコンビニでもいいやろ。ほら、もう行くで」

彼は私が歩き出すことを促すように、ドン、と背中を押した。

「えー、もうなんでよ」

あ、もしかして。

「やっぱり買うのやめる、とか言わないよね?」

「アホ! そんなん言わへんわ。言い出したん俺やぞ」

「えーじゃあどうしてよ……」

「なんでもいいやろ。行くで」

宮本くんは振り返ることなく、スタスタと歩き出す。

「もう、どうして。せっかくアイス食べられると思ったのに」

いつになく名残惜しくて、コンビニを振返る。

すると。