「遅かったな」
体育館の入り口で部活用のシューズに履き替えていると、たまたま近くを通りかかったキャプテンが声をかけて来た。
「すみません」
そう言いながら紙を差し出す。
キャプテンは書類にサッと目を通すと、「ここ、にじんでいるけど。水にでも濡らしたんか?」と、親の署名を指差した。
「すみません……汗でにじみました」
正直に答えると、キャプテンは疑うような目で俺を見た。
「汗をかくほど走ってきたのか?」
その割には遅かったけど、と付け加えたキャプテンに、もう一度「すみません」と謝る。
なにかを見透かすようにジッと俺の目を見つめたキャプテンは、「まあ、これで受け取っておく」と答えた。
「はやく練習に戻れ。今、パス練やから、Aチームに入ってくれるか?」
「わかりました。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、あいつの一瞬だけ見せた、泣きそうな顔が頭に浮かんだ。
体育館の入り口で部活用のシューズに履き替えていると、たまたま近くを通りかかったキャプテンが声をかけて来た。
「すみません」
そう言いながら紙を差し出す。
キャプテンは書類にサッと目を通すと、「ここ、にじんでいるけど。水にでも濡らしたんか?」と、親の署名を指差した。
「すみません……汗でにじみました」
正直に答えると、キャプテンは疑うような目で俺を見た。
「汗をかくほど走ってきたのか?」
その割には遅かったけど、と付け加えたキャプテンに、もう一度「すみません」と謝る。
なにかを見透かすようにジッと俺の目を見つめたキャプテンは、「まあ、これで受け取っておく」と答えた。
「はやく練習に戻れ。今、パス練やから、Aチームに入ってくれるか?」
「わかりました。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、あいつの一瞬だけ見せた、泣きそうな顔が頭に浮かんだ。



