「ほら、幼稚園の頃から一緒だから」

「それでも、ただの幼馴染にしては」

「あ、そういえば!」

無理矢理宮本くんの言葉に被せる。

ええい、もうこうなったら仕方がない。

「宮本くん、数学の課題やっていないんでしょ? 私のでよければ、ノート貸そうか!?」

「あ、ほんまに? 助かるわあ」

宮本くんは人懐っこい笑みを浮かべると、催促するかのように一度は引っ込めていた左手を私に向かって伸ばす。

「ほら、悠斗も! もうすぐ授業始まっちゃうよ!」

私はスッと立ち上がり、悠斗の身体を彼の席の方へ向ける。

「わざわざ言いにきてくれてありがと! また放課後ね?」

「お、おう?」

怪訝な様子で私を一瞥した後、それ以上何も言わずに悠斗は自分の席へ戻った。

「それで? 数学のノート貸してくれるんやんなあ?」

「……わかってるって」

私はいそいそとカバンからノートを取り出す。

もう。

なんでこんな意地悪な人を助けなきゃいけないんだろう。

彼にバチでも当たれば良いのに。