「うん、ここ……。え、もしかして……」

「俺、ここ、お前の隣」

「ええ……」

嘘だと言ってほしい。

せっかくの素敵な席なのに、隣の席が宮本くんなんて……。

この席の価値が半減しちゃう。

「せっかく良い席を引き当てたと思ったのに……」

ため息と一緒にポツリと吐き出すと、聞こえてしまったのか、隣から「それは俺のセリフなんやけど」というぼやきが聞こえてきた。

「なにが嬉しくて、毎日自分のストーカーの隣に座らないとあかんねん……」

「だから、ストーカーじゃないってば……」

一番関わりたくない人と隣の席になってしまった事実に落胆してしまい身体から力が抜ける。

ああ、いくら良い席でも、彼の隣になるぐらいなら、まだ鈴ちゃんの席になる方がマシだった。

「しかも、鈴ちゃんの斜め後ろ、悠斗じゃん……」

鈴ちゃんの席になりたいわけではないけれど、
それでも悠斗が近くにいて、この男と離れられるのなら、今回に限ってはあの席の方がよかった。

何かの手違いで、もう一度席替えやり直してくれたりしないかな。

こんなことになるなら、「目が悪い人」に嘘でも手をあげて、先に引かせてもらえばよかった。

確実に前の方の席になるけれど、それでも、この人の隣に座るよりはまだ耐えられるものだっただろう。