「……ごめん」

「……なにが? なにが、“ごめん”なの?」

私はとりあえず腕を振り払おうと、大きく腕を振る。

それほど強く掴まれていたわけではなかったのか、あっさりと掴まれていた右手は自由になった。

「……『ただの友達』ってことぐらい、知ってたよ。『付き合うわけない』って、そんなことも知ってたよ」

唇が震えそうになる。

けれど、宮本くんのせいで傷ついている、とは思われたくなかった。知られたくなかった。

「……別に宮本くんは何も悪くないよ。でも、『ただの友達』なら、期待させるようなことは言わないで欲しかった」

ああ、私、酷いな。

勝手に期待していただけだとわかっているのに、彼のせいにしてしまった。

けれど、今は素直に謝ることが出来るほど、私は強くない。

目頭がじんわりと熱くなる。

涙がこぼれ落ちないように、力を入れて目を見開いて、そっと告げる。

「……もう関わらないで」

「あ、おい」

宮本くんは何か言いたそうにしていたことに気づいたけれど、何か言われる前に彼に背を向ける。

語尾が涙声になってしまったことに、どうか彼が気づいていませんように。

今の言葉が本心だったのか、それとも強がりだったのかわからないまま、自分でもわからないまま学校を飛び出して駅まで走った。

ちょうどやってきた電車に飛び乗ると、私はスマートフォンの電源を切った。