宮本くんのお誕生日当日、約束の時間より少しだけ早く着き、チケットを二枚購入する。

他校との練習試合が終わった、と連絡を受けたのがちょうど一時間前。

もう十五分もあれば、きっと到着するだろう。

私はプラネタリウムの入り口付近にある簡易的なお店に入り、商品を見ながら彼を待った。


「お待たせ」

「あ、宮本くん」

すっかり寒くなってきたというのに、彼の額には汗が浮かんでいる。

「急がなくてもよかったのに……」

「別に、そんなに急いでないよ」

そっか。その割に、汗もかいているし、かなり息も乱れているけどな。

けれど、気づかなかったことにしておこう。

急いできてくれたことが嬉しかったから。

「あ、チケット、買っておいたよ。今からちょうど二十分後の回」

この回を逃すとまた一時間待たないといけないから、この上映に間に合ってよかった。

「ありがとう。いくらやった?」

「あ、お金はいい」

カバンから財布を取りだそうとする彼の手を阻止する。

「私の誕生日の時、散々出してもらったもん。今日は私が払うよ」

「けど、それは俺のプライドが許さん」

「何そのプライド」

クスッと笑った私とは裏腹に、彼は真面目な顔で「だって」と続けた。

「……バスケの時以外も、『かっこいい』って思ってほしいんやもん」

「それって……」

どういう意味? と尋ねようとしたとき、

「18時20分に上映が始まる作品は、ただいまより入場を開始します」

アナウンスが建物の中に響いた。

「ねえ、宮本くん、今のって」

「うるさい。なにもない」

彼はそっぽを向くと、「行くぞ」と痛いぐらいに強く腕を引っ張る。

けれど、私は見逃さなかった。

宮本くんの耳が、ほんのり赤くなっていることに。


ねえ、宮本くん。

そんなことされたら、私、ちょっとだけ期待しちゃうよ。
もしかしたら、宮本くんにとって、“女の子”として見てもらえているのかなって。