「邪魔、しないようにする」

「うん……?」

先手を打たれると思っていなかったのか、彼は私の言葉の意味が理解できなかったらしい。

宮本くんは首をかしげた。

「話しかけないほうが良い……?」

文末にかけて、徐々に声が小さくなる。

「そんなことないよ」って言ってほしい。

自分から言い出したにもかかわらず、彼に否定してほしいだなんて我儘だとわかっているけれど。

宮本くんは私の心内とは反対に、ハハッと笑った。

「違う。俺が言いたかったのは」

彼はスッと私から目を逸らすと、「毎日、一緒に帰ってほしいなと思って」と続けた。

「え、今、何て言った……?」

聞き取れず、いや、聞き取れたかもしれないけれど、まさか、そんな。

私が問い返すと、彼は少し大きな声で、「だから! これから一緒に帰ってほしいなと思っただけ!」とはっきりと言い放った。

「へっ……」

予想外の声に、素っとん狂な声をあげる。

部活に集中することと、私と毎日一緒に帰ること、どう関係があるんだろう。

「それは、どうして……?」

「どうしてって、あかんの?」

宇山のことは毎日待ってたのに、と彼は不満そうに付け加える。

「いや、待つのはいいんだけど、どうしてかなって……」

「だって高橋と一緒にいる時間、楽しいんやもん。楽しい息抜きがある方が部活も頑張れるし」

“私と一緒にいる時間が楽しい”

彼のストレートな言葉が、私の胸に届く。

そんなこと思ってくれていたんだ。嬉しい。嬉しい。とても嬉しい。

「それで? 待っててくれるん?」

思わず笑みがこぼれた私の顔を、宮本くんは覗き込んだ。

「うん、待ってる!」

「ありがとう。高橋のおかげで部活頑張れるわ」

「そんな……私のおかげって……」

頬が熱くなる。

隠すように両手で頬を包んだ私を見て、宮本くんは穏やかな笑みを浮かべた。