「この店は、組に納めるお金のシノギで。
俺の本業はそっち」
その、そっちとは、やはりヤクザって事なのかな?
こんな優しそうな風貌な人が?
けど、先程、ナガクラって呟いていた時の顔は、けっこう怖かったけど。
「ナツキ君には、けっこう世話になってるから…ねぇ。
俺、ここだけじゃなくソープもやってんだけど。
ナツキ君には、けっこういい女の子紹介して貰ってるから。
ほら?よくホストにハマって風呂に沈む、とか聞くでしょ?
ナツキ君のお客さんで、風俗で働きたい子けっこううちに来てくれて。
元々、彼の店のオーナーと俺が仲良くて、ナツキ君ともちょっと仲良くなったんだけど」
この人と、先程の菜月さんというイケメンホストとの関係は、いまいちよく分からないけど…。
なにかしら、あのイケメンホストに借りがあるって事なのかな?
「まりあちゃんも、ナツキ君に会えて良かったね。
彼、お客さん以外には優しいから。
そして、俺はそんなナツキ君よりも、スッゴク優しいからね」
そんな風に、本当に優しい人が自分で優しいとか言うのだろうか?
そもそも、この人ヤクザみたいだし。
「…二人とも、嘘臭いです」
この人もそうだけど、ホストの菜月さんも。
私は菜月さんに、嘘付かれたみたいだし。
「今日はエイプリルフールだもんね」
康生さんにそう言われ、今日はそうか、と思う。
最近、日付や曜日の感覚がなかった。
「とりあえず、俺昼食べてないからお腹空いたし。
何か食べに行こう?
まりあちゃん、何が好き?
なんでも、優しい俺がご馳走する」
何が好き?って、それは、食べ物って事?
この康生さんが、何かお昼ご飯を食べに連れてってくれるって事?
「―――たまご焼き」



