嘘と、恋。


「そのアザ…。
誰かから、暴力でも受けてるの?
明らかに、殴られたって感じだよね?
いったそぉー」


私の唇の左側から頬に、言われたように青アザがある。


「そもそも。
なんでこんな店で働きたいの?」


そんなの、お金のためじゃん…。


「分かった!男?
男に貢ぐ為とか?」


「貢ぐのとは、ちょっと違うけど」


そう口にして、本当に貢ぐのとは違うのかと考えてみる。


「じゃあ、なんで?」


「セイ君…いえ。
彼が、借金返すお金に困ってて。
その借金返さないとヤバいらしくて。
聞いた話だと、最初は普通の金融屋に借りたのに、いつの間にかヤクザに借りた事になってたとか」


セイ君はそう言っていたけど。


「返さないうちに、債権をちょっとヤバい所に売られたんだ」


よく分からないけど、とりあえず頷いてみる。


「ちなみに、そのヤクザはどこの組?」


どこの組だろうか?と考えてみる。


「分からないです。
彼に聞いたら分かるかもだけど…。
ただ、電話で彼がそのヤクザと話してた時。
ナガクラさんって言ってました」


あれ?ナガクラじゃなく、ナガオカだったかな?


「永倉…」


その名を口にした瞬間、オーナーから笑みが消えた。


「オーナーさん…?」


そう呼びかけると、また目の前のこの人は笑顔になる。


「だから、オーナーじゃなく、康生って呼んでよ。
あ、俺も名刺あるから、まりあちゃんにあげる」


そう言って、私に向けるようにテーブルに置かれたこの人の名刺。


聖王会 鈴城組 高崎康生


そう、書いていて。


この人も、ヤクザなのだろうか?


○○会とか○○組って、それっぽい。