嘘と、恋。

「康生さん、夕べ私のボストンバッグの中、見ましたよね?」


「え?なんで?」


「多分、私がお風呂入ってる時でしょ?
私、実はボストンバッグわざとほんの少しだけチャック開けてたんです。
だけど、夜寝る前に、そこから歯ブラシとか取り出す時、きっちりとチャック閉まってて」


「あー、そっか。
うん。見た。ごめんね。
俺、見たらいけないと思うもの、見たくなるたちで。
あ、流石に人のスマホとかは勝手に見ないけど」


そう笑っていて。


ボストンバッグの中を見て、この人はまだ私に笑顔で接してくれるんだな。



「あのボストンバッグの中には、凶器に使った包丁が血に汚れたまま入っていたでしょ?
同じように、血の付いた私の服も」


あの人達を包丁で刺すと、沢山の血が出て。


私を血で汚した。


「永倉の言ってた、まりあちゃんがババって意味はそれだったんだね。
アイツもあの鞄の中見たんだろうね。
確かに、俺らこんな仕事してるから、まりあちゃんと一緒に警察とかに引っ張られたら、色々面倒だからねぇ」


「はい…」


もし、私が今警察に捕まったら、一緒に居る康生さんに迷惑が掛かるだろうな。


「後、学生証もあったよ」


そういえば、私の学生証も入れていたな。


なら、それを見たならば、康生さんはもう私がどこの誰で、何歳かも知っている…。


「でも、偽名使ったり年齢も誤魔化そうとまりあちゃんしていたのに。
なんで本物の身分証持ってんだろって、それが妙に気になったんだけど…」


「……それは…その…」


まあ、いいか、と、答えない私に康生さんはそう言う。


「康生さん。私、康生さんに嘘ばかり付いててごめんなさい。
私を殴っていたのは、セイ君じゃなくて。
そもそも、セイ君は彼氏なんかじゃない」


「それは、俺が勝手に勘違いしてただけだから」


だけど、私はその康生さんの勘違いを利用していた。


この人が、私は彼氏に殴られて可哀想な女の子だから、優しくしてくれていたから、
本当の事が言えなかった。