暫くした時。
私のショルダーバッグの中から、スマホの鳴るような音が聞こえた。
それは、康生さんが今日くれたもので。
なら、この電話はもしかして康生さん?
と、そのスマホをショルダーバッグから取り出した。
見ると、画面には数字が並んでいて。
とりあえず、その電話に出た。
『まりあちゃん、何処に居るの?』
やはり、電話は康生さんからで。
電話越しで聞いてもその声が優しくて、なんだか安心した。
「康生さん、今は…」
今は、何処なのだろうか?
この辺りに住んでいない私には、ここが一体何処なのか?
『まさか、と思うけど。
DV彼氏の所?』
それは、セイ君の事だろうか?
「はい。確かにセイ君にもちょっと会ってましたけど。
ごめんなさい。康生さんの言い付け破って。
どうしても、セイ君に返して貰いたいものがあって…」
『なら、俺に言えば代わりに取りに行ってあげたのに?』
「すみません…」
今思うと、康生さんにそう頼めば良かったのか?
でも、康生さんにボストンバッグの中身を見られたくない。
『で、今、何処?
その男の住んでる場所は?』
「えっと…。セイ君の家…Y駅近くにある○○△っていうワンルームマンションなんですけど。
そこの一階の101号室で」
『今も、その男の部屋の中に居るの?』
「いや、違います。
そこから、すぐのバス停でバス乗って…。
多分、8コくらい停留所過ぎて…。
あ!ナガクラさんって人の所に、セイ君に連れて行かれて…。
その人の居るヤクザの事務所みたいな所で。
でも、私、逃げ出して、今はその近くのスーパーの前に居て」
『分かった…。
何処か分かったから。
まりあちゃん、そこから動かないで。すぐ行く』
そう言って、電話は切れた。



