「じゃあ、俺はこれで失礼します」
そう言って、セイ君はエイジって人から差し出された借用書を掴むと、
慌てて逃げるようにこの部屋から出て行った。
「女、あの男から、なんて聞いてる?」
セイ君が部屋から出て行くと、ナガクラさんが私にそう訊いて来る。
ただそうやって質問されただけなのに、
この人が怖くて、ちょっと泣きそう。
私を見る目も、睨み付けて来るみたいで。
「えっと…この先、私は海外の優しいお金持ちの家の子になれるとかなんとか…」
そう言い終わると、
ナガクラさんは、フッ、と鼻で笑った。
それは、何処か私を馬鹿にしているようで。
「大方は間違っちゃあいねぇけど」
けど、私が思っているのとは、決定的に何かが違うのだろう。
「君、まだ若いからそうやって簡単に人の言う事信じるのかもしれないけど。
ちょっとは、人を疑った方がいいよ?
君を俺らに売ったあの男の事もそうだけど。
俺らなんか見るからにヤクザって感じで。
悪い人間なの分かるでしょ?」
エイジって人は、私にちょっと同情的な表情を浮かべているけど、
口元は笑っている。
やはり、この人達はヤクザで。
悪い、人達。
「…でも、ヤクザでも康生さんはいい人なのに…」
私がそうやって溢した言葉に、ナガクラさんの右の眉が動いた。
「俺の知ってるヤクザに、康生って奴が居る」
ナガクラさんの言葉で、そういえば、と思い出す。
あの面接の時、ナガクラさんの名前を聞いた時、康生さんも反応していたけど。
まさか、このナガクラさんと康生さんは知り合い?



