マリアの心臓




「羽乃も、もう少し優木まりあを見習え。おまえ今何してた? あ?」

「凄むな、凄むな。その子が関わってんなら、どうせおまえ来るだろ? つまりおれの出番はねえ。おけ?」

「オーケーじゃねえよクソヤロー。何かあったらどうすんだ」

「特に大事にならなそうだったから、鈴夏も余裕たっぷりな登場したんだろ。校門のぼってる暇あったら、さっさと来いよ」

「そのほうがかっけーだろ」

「どこがだ。優木もドン引きしてたぞ」




え? アタシのこと呼んだ?

話をまったく聞いていなかったアタシに、「かっこいいよな?」「ドン引きしてたよな?」と主語のない質問をされ、戸惑ってしまう。




「さ、優木まりあ、答えろ」

「優木、正直でいいぞ」

「え、あ、あの……!?」


「…………まりあ?」




わ! 助け船!

小柄な少女が話を遮ってくれて助かった!


……でもなんで、いきなり名前を呼び捨て?




「まりあって……」

「あ、はい、アタシの名前ですが」

「……」




驚いているような、うろたえているような。
なんとも言えない顔で、アタシを凝視してくる。


優木まりあとも知り合いだったのかな?

そんな記憶なかったと思うけど、思い出せてないだけ……?


あるいは、悪女のうわさが隣の女子中学にまで広まってるのかも。

これを機に、いい印象に変わったらいいな。