マリアの心臓




「でないと……痛い思いをしますよ?」




うわさによると、失恋は重症らしいので。




「そーそー。その子の言うとおーり!」




突然、どこからか、聞き覚えのある声が。


辺りをキョロキョロと見渡すと。

校門の上に、誰かが立っていた。


……え? 校門の、上!?




「痛い思いすることになるよ?」




そこからジャンプし、華麗に着地。

ヒーローショーのような派手な登場に、その場にいた全員が目を奪われる。




「ボクの手によって、ね」

「は、花室鈴夏……!!」




にっこりと完璧すぎる笑顔で、ぐっと握りしめられた拳をちらつかせる。


ヒーローのポジションでありながら、風格はラスボスのそれだ。

どことなくオーラが黒い。


男性陣は及び腰になる。

それを見逃すことなく、笑顔のまま、野蛮な腕を締め上げた。




「い、痛い痛い痛い……!!」

「ほーら。言ったよね? 痛い思いするって」

「は、離し……!」

「え? なに? もっとって? ドエムかよ~」




グググ、と骨に圧がかけられていく。

たった今やって来たばかりだというのに、これまでのやりとりをすべて見ていたかのようだ。




「鈴夏、やめてやれよ」

「えー、やだ」




ウノくんの言うことに、頑なに耳を傾けようとしない。

それどころか力を増していく。