マリアの心臓




そろりと忍び足で近づいてみる。


騒ぎは、校門の奥。
正しくは、学校前で起こっていた。


うちの生徒かと思っていたけれど、ちがった。

私服姿の筋肉質なお兄さんがたが、円になっている。




「円になって……遊んでる?」

「それはガチの幼稚園児な。よく見ろ、中に誰かいんだろ」

「あ、ほんとだ!」




筋肉と筋肉に埋もれているのは……よく見えないけど、小柄なヒト、ぽい。


スカートがちらりと垣間見えた。

どうやら女の子を取り囲み、じりじりと詰め寄っているもよう。




「きみかわいいね?」

「カレシいんの?」

「俺とかどう?」




告白……?
にしては、妙に、ゆるい。

もしや……あれが俗に言う、ナンパってやつかも!




「いいかげんにしてください……!」




円の中から、華奢な声が放たれた。




「こういうの迷惑です! 邪魔です! 不快です!」


「すげえ言われようだな俺ら」

「そう言ってよろこんでんじゃねえの?」

「ドエムじゃねえか! あはは! かわいー!」


「ロリコンは黙って道を開けてください」




うわーお……。

線の細いソプラノが、図太いことをズバズバと……!


それでも引かない男性陣は、おそらく鋼のメンタルなのでしょう。




「そうツンツンされると、よけいにいたずらしたくなっちまうな」

「これはいたずらではなく、いじめに含まれます」

「いじめてほしいの? いーよ」

「どういう耳してるんですか。いじめられてそうなったんですか」

「本当はいやじゃねえんだろ?」

「いやです」