草木の茂る中庭の中央にどんとそびえる大木に、おもむろに背を預けた。
倒れこむように座り、目を閉じる。
瞼の裏に現れた彼女は、アタシの知る彼女じゃなかった。
『うっ……ぐすっ……』
……泣いてる?
暗闇の中で、ぽつんと。
ひとりうずくまっている女の子がいる。
形容でも何でもなく、本当に、とても小さくて、か弱くて。
声を押し殺して泣く、その姿が、アタシとそっくりだった。
あれは、アタシ……じゃない。
夢で見た、幼少期の優木まりあだ。
ううん、夢よりももっと幼い。
『う、うぅ……っ』
『――……どこかいたいの?』
アタシの声が届いたのかと思った。
けど、ちがった。
無垢な少年のような声だった。
『……だ、だあれ?』
『エイだよ。ぼく、エイちゃん。きみは?』
『……まりあ』
その瞬間。
ぱあっと暗闇が晴れ、みるみる色づき始める。
由緒正しいパーティーの会場にある、広々とした庭園。
その片隅に咲く、うんと大きな桜の木の下。
満開の薄紅を傘にして、むせび泣く少女。
一番に見つけてくれたのは、青い目を瞬かせる少年。
まるで本物のお姫さまと王子さまのように、ふたりは、めぐりあった。



