「なんで……こうなるのよ……っ」
耐えきれず、ポニーテールの女の子がドシドシ迫ってくる。
男の子たちが止めようとするも、聞く耳を持たない。
「あんたは、何にもわかってない……!」
劇の最中に飛び入り参加? いいの? ありなの?
まあアタシも代役だし、なんでもありか!
それとも、彼女もはじめから演者だった、とか?
『自分がイタイ女だって、自覚しなさい』
あの言葉も、実は、セリフで。
だから彼女は、「わかってない」だなんて言って……。
「わかって、ない……アタシが……」
「そうよ! 勘違いもはなはだしい!」
「勘違い……?」
今にも掴みかかりそうな勢いで、アタシと向かい合うポニーテールの女の子。
相変わらず、怒ってる。
泣きそうな目元に、ぐっと力を入れて。
ここにいる誰よりも、苦しんでる。
どうして……。
ハッ。つと、点と点が線になる。
あの「イタイ」の真意って。
もしかして。
自分が居たい女――「王子さまよりも、わたしがそばにいたい」という口説き文句だった……!?
『女も女で大変そうだな』
『だから……逃げるんじゃねえぞ』
あれも、これも。
自分の気持ちから逃げるな、と。
王子さまじゃ意味がないのだ、と。
ときに見守り、ときに背中を押そうとしてくれていたんだろう。
そっか……。そうだったんだ。
アタシはなんてことを……。
王子さまを探しに行こうとしていたアタシは、たしかに、大きな間違いを犯すところだった。



