マリアの心臓




ハーフ特有の髪を、売った。
健やかに肥えた内臓も、売った。
まっさらだった心も、売りさばいた。



裏でコソコソと稼いでいたら、ある日、見るからに危ない男にスカウトされた。

悪者を成敗する仕事をしないか、と。

まともな仕事かと飛びついたが、すぐに現実を思い知らされた。


実際は、殺し屋の真似事のような依頼しかなかった。
けど今さら、拒否権なんかなかった。


何だってやった。やるしかなかった。


やらないと明日はなかった。



世界はこんなにも醜いものだったのかと、絶望した。



スカウトしたあの男は、ヤクザとか、裏社会のドンとか、そこらへんのおえらいさんなんだろう。依頼を言い渡すのに都合がいいからと、神亀を紹介してきたのもそいつだった。


オレのことはあくまで、駒のように扱った。

それで金がもらえるなら、いくらでも我慢した。



吐き気がした。

痛みを感じなくなった。

愛なんかどこにもなかった。



そんな世界に慣れていく自分が、何よりきらいだった。



こんなオレを、あいつに見せたくなかった。

もう二度と会えない、会うもんかと、気持ちに蓋をした。


もうあいつの隣に立てる自信がなかった。




――なのに、どうして。




『ねえ! エイちゃん! 待ってよ!』




汚い金を使って入学した高校で、あいつと再会するなんて。


偏差値の低い、不良校と呼ばれるような学校だぞ?

誰が想像できた?



“フツウ”のふりをして欺いてるオレを、どうして、放っておいてくれないんだ。



今のオレはあいつにふさわしくない。

あのときあげたハートごと傷つけて、穢してしまう。


ハッピーエンドにしてやれないなら、せめて、あいつだけでも幸せに生き続けてほしい。



そのためなら、オレは、おまえの「エイちゃん」を殺してやるよ。