マリアの心臓




ゆるやかにあいつの病態が悪化しても。
会社(ウチ)の経営がうまくいかなくなっても。


大丈夫、何も変わらない。

変わるわけがない。


そう根拠もなく思いこんでいた。




『好きだ。許嫁とかそんなの関係なく、大好きだ』




想いを告げることに、何の覚悟もなかった。


最後はぜったいハッピーエンドだから。

赤い糸で結ばれたふたりは、仲良く、幸せに、生きていく運命だから。



だから、オレは、何にも怖くなかったんだ。




『たとえエイちゃんが人間じゃなかったとしても、あたしにとってはどうでもいいことなの』




オレもだ。

オレも、想ってる。ずっと、ずっと。



約束が叶うときを、今か今かと待ち焦がれていた。

大好きだった。


あいつの「エイちゃん」で在り続けたかった。




――ごめん……変わっちまったよ、オレは。




会社が倒産し、すべてが一変した。


家も服も、何もかも取り上げられ、残ったのは多額の借金。

家庭崩壊し、家族はバラバラになり。

当然、許嫁の関係も解消された。



“ふつう”が、一瞬にして砕け散った。



消息を絶った。

ホームレス同然の生活をした。


借金地獄から早々に脱落した親の代わりに、オレがなんとかしなければいけなかった。