マリアの心臓




『ねえねえ、エイちゃん』

『んん? なあにまりあちゃん』

『また、まりあとあそんでくれる?』

『うん! あそぼ!』




オレだって、次があると思っていた。

帰れる場所が増えたと、よろこんでいた。


毎日のように会うことが、オレの“ふつう”になっていた。



オレは恵まれすぎていたのだ。


小さな会社といえど、社長令息としてなに不自由のない生活をして。

報われない世界など知りもせず。

かけがえのない出会いを果たし。


そう……いつだって、愛情を降り注がれていた。




『ん。やくそく!』

『ずうっといっしょだよ!』




だから当たり前みたいに小指を差し出した。


家族ぐるみの付き合いも始まって、会う頻度が多くなって。

隣にはいつも、あいつがいた。




『アタシ、エイちゃんとけっこんする!』




お互いに、意味もちゃんと理解できていなかった。

それでも、親の前で堂々と宣言しきれるほど、自信であふれていた。



約束は必ず叶うものだと、信じて疑わなかった。
未来はたしかに明るかった。




『エイちゃんが許嫁なんて、なんか、変な感じだね』




正式に許嫁と紹介されたときは、心底うれしくて、でもちょっと照れくさくて。

泣きそうなくらい誇らしかった。


あいまいな口約束じゃなく、あいつを守ってやれる理由ができたんだ。