マリアの心臓




見せたくなかった。

見られたくなかった。



ガラス玉のように澄んだ、その瞳を。


オレが。

オレのせいで。


汚してしまった。




「エイちゃん……あ、あの、アタシ……」




見るな。

消えろよ。


お願いだから。




「こ、この、携帯を……」

「っ来るな!!」




一歩分、ローファーが浮き、とっさに喉を枯らした。

反射的にびくりとして、一歩半、引き下がる。


それでいい。


そのまま、いなくなっちまえ。



お願いだから……そんな目で、見ないでくれ。


……ごめん。

見せちまって、ごめん。




地獄などないのだと、信じていてほしかった。


まりあ、おまえにだけは。




「エイ……ちゃ……待って、エイちゃ……! エイちゃん……!!」

「くっ……!!」




あいつが群衆の波に逆らえず、あっけなく流れてしまう。

と同時に、標的もこれ幸いと、残党どもとともに路地の奥へと逃げていく。


踏んだり蹴ったりだ。




「追うぞ」

「え、で、でも……」

「ど、どっちを……!?」

「標的に決まってんだろ」

「じゃあ優木は!?」

「衛……いいの?」




考えるまでもない。

そうだろう?



フードを深くかぶり直し、自ら光を遮る。

満月の及ばない茨道へと、迷いなく進んでいった。


一度足を踏み入れてしまえば、もう、帰れない。