マリアの心臓




この場しのぎのうすっぺらい皮は、すぐにはがれ、男の本性があらわになる。

ぶっさいくな面だった。


オレも、こいつにはそう見えているんだろう。

こんな物騒な路地が似合うヤツは、たいがいそんなもんだ。




「ハッ! ガキに何ができるんだ!」

「逆にさあ、何ができると思う?」

「……い、いい気になるな! すぐにSPが動――グホッ!?」

「あ、手ぇ滑っちった」




忌々しげに喋っている途中で、鈴夏の拳が炸裂した。

男の顎を強打した反動で、後頭部が壁にぶつかる。




「うわ、痛そうな音したな」

「まだまだこれからっしょ」

「……だな。おれ、こいつみてえなイイオトナぶったヤツ、きらいだし」

「ボクも。殺るっきゃないよね」

「ボッコボコにな」




羽乃がポキポキと骨を鳴らす。

すると、扉の壊れた裏口のほうが、騒がしくなる。




「てめえら、神亀か!」




招かれざる客、襲来。


ぞろぞろと威勢よく現れた、背広姿の男たち。

その数は、ざっと10名弱。


おそらく、さっき中年男が言いかけていたSPとやらだ。


だが、どう見ても、カタギじゃない。

ふつうのSPは、長刀やピストルを持ってないし、神亀を敵に回すわけがない。



「裏で取引してたのって、こいつらか」

「おれらがこうやって仕事すんの、邪魔してえんじゃねえの?」

「……はぁ、面倒だな」