「おっ? 来た来た」
「痩せ型、中年……あいつだな!」
どうやら標的が来店したらしい。
ふたりが写真と照らし合わせ、確信を得る。
ここからが、本番だ。
うまく気配を消して、店の裏側に回った。
鈴夏がピックで裏口を開け、羽乃が監視カメラを細工する。
念入りな下準備を経て、代表してオレがひとりで店内にもぐりこむ。
標的がトイレに立ったタイミングを狙い、裏口まで運び上げた。
「い、った……。何をするんだ、突然……?」
狭い路地に投げ捨ててやると、中年男は激痛よりもまず、この状況に錯乱した。
立ち上がろうとするのを阻み、二度も転ばせる。ブティックで新調したと思しき革靴を踏みつぶした。
少しずつ殺気を濃くしていけば。
中年男の錯乱が、やがて、わかりやすく怒気へと豹変する。
「き、貴様ら、何なんだ……!」
「あんたなんだろー? なんちゃって金持ちおじさんは」
「はあ?」
「その一丁前なスーツも靴も、横領した金で買ったのかよ。クズだな」
「な……な、何のことだか……。き、きみたち、何か勘違いをしてないかい?」
「今さら猫かぶっても意味ねえよ。さっさと殺られろ」
おまえがいい顔をしようが、クズだろうが、関係ねえ。
こっちは依頼されて、来てやってんだ。
言い訳を聞いてやる義理はねえよ。
仕事は早く終わらせる主義なんだ。
ここに長居するつもりは、さらさらねえ。