『どうせいなくなるんだから、おまえは生まれなきゃよかったね』
『……う、ん』
『お母さんやお兄ちゃんはおまえが可哀想でかまってやってるだけなんだよ』
『……っ、』
『だからお父さんが、教えてあげているんだ』
沈んでいく少女の頭を、軽く叩いた。
そのがさつな右手が、突然髪の毛をかきむしる勢いでひっつかんだ。
『痛……ッ』
『悪い子には、罰を与えないとな』
空いている左手がおもむろにポケットの中を探ると、不気味な光が反射した。
あれは……カッター?
なんでそんな物を……。罰っていったい……。
『いらないものは、お父さんが断ち切ってあげよう』
鋭利な刃が、高々と振り上げられた。
『い、いや……お父さ……っ、お願い……』
『黙れ! これは罰だ』
躊躇なく、容赦なく、悪気なく。
少女の頭めがけて、刃が狙う。
なんで。
だめだ。
だめだ……!!
心臓が、一瞬、止まった。
『や、っ、やめろ……!!』
涙が、宙を駆ける。
ずっとぼやけていた視界が、クリアになる。
あの子を助けたくて。
助けられるなら。
どうなったってよかった。
ドクンッ、と。
再び、心臓に、血がめぐる。



