「ねえねえ」
「ツインテールの、あの子さ」
「まーたやってるよ」
ぞろぞろと生徒が通り過ぎていく、学校の正門。
ざわざわと朝イチから騒がしいのは、いつものこと。
寝ぼけ眼がいやに冴え、嘲笑で満ちていく。
その視線の先には、ひとりの少女。
「ねえ! エイちゃん! 待ってよ!」
高く昇っていく太陽の光を浴び、きれいに白んだツインテールが、ふわっとなびいた。
その可憐な動きとは裏腹に、引き留める声は苦しさでいっぱいだった。
「あたしのこと、無視しないでよ……!」
「黙れよ」
どれだけ必死にしがみついても、いつも、同じ。
エイちゃん――長身の男の子は、冷たく突き放す。
「二度とオレに近づくな」
「やだ! やだよ……! だって、あたし……!」
「失せろ」
怒っても、泣いても、振り向いてくれない。
あっけなく遠のいていく。
2週間前にあった入学式から、ずっとだ。
彼がいるから、この高校に来た。
彼といたくて、毎日ここで待ち伏せした。
なのに。
「うーわ、今のやばー」
「あのヒトが相手にするわけないじゃん」
「さすが、うわさの悪女」
あたしに興味を向けてくるのは、彼じゃない。