中学時代の六花はまだまだあどけなさが残っていて、可愛いなと思うのも子供に対するものと同じだった。

 それがいつからか、ひと言では表せない複雑な表情をかいま見せるようになり、落ち着きが出てきて確実に大人の女性へと成長していた。

 勉強にも一生懸命で、自分のやりたいことを見つけてからはそれに向かって努力もしている。内面からもひたむきさを感じるし、本当にいい子なのだ。

 成人に近づき、彼女がするなにげない仕草や笑顔に愛しさを感じるたび、本当は触れたくて仕方なかった。だが同時に、神聖な領域を侵してしまいそうな感覚にもなって、むやみに触れるのはためらわれた。

 六花からの好意も感じている。しかしそれは、ずっと前から彼女の一番近くにいた男が俺だったから気を許しているだけで、同世代の男に本当の恋をするかもしれない。

 十歳も年の離れた自分より、そのほうが彼女にとっていいのではないかと思う気持ちも少なからずあり、十八歳を過ぎても学生のうちはあえて彼女を自由にさせていた。

 もし短大を卒業する頃になっても彼女が誰かを好きになっていなければ、そのときは俺のものになってほしい。それまでは見守っていようと、ずっと我慢していたのだ。