「一緒に寝てくれるの?」
普段は言えないような冗談が自然に口をついて出た直後、聖さんの目が見開かれた。
それからみるみる真剣な表情になり、小さく息を吐き出したので、ふざけすぎてしまっただろうかとすぐに反省し始める。
しかし、彼の瞳は怒っているというより、また別の熱が滲んでいるように見える。
「……俺はね、お母さんや聖人君子なんかじゃないんだよ」
いつもの聖さんとはどことなく違う、セクシーさを増した低い声が響く。
「ただの男だ。そんなにとろけた顔で誘われたら、〝いいお義兄ちゃん〟じゃいられなくなる」
胸の奥で、ドクンと大きな音が鳴る。彼のこんな反応、想定外だ。
私の横に肘をつかれ、マットが沈む。彼はもう片方の手でそっと髪を撫でた。距離がさらにぐっと縮まって、私の口からはもう冗談など出やしない。
「ひ、じり、さ……」
呆気に取られているうちに、彼の顔がどんどん近づいてくる。
やっぱり夢だろうか。まるで彼が私に欲情しているかのような、こんな甘い展開になるわけがない。なるわけないはず、なのに。
信じられない気持ちになりながら、私は瞼をぎゅっと閉じた。



