おすそ分けしてくれた漬物を浮かない顔でパリパリと噛み砕く私を、彼女は肘で突いてくる。


「一応禁断の恋の部類に入るんだろうし、六花の妄想が捗りそうなシチュエーションじゃん」
「……否定はしない」


 そうなのだ。これまで読んできた小説にも禁断の恋はたくさんあったし、いけないのに惹かれてしまう背徳感もいいエッセンスになる。妄想の上では。


「でも、実際その立場になるといろいろ考えちゃうよね。世間体はやっぱり気になるし、そもそも聖さんに義妹以上に見てもらえるかどうか……」


 すっかり告白する気も自信も失せてしまい、遠い目をして温かい緑茶をすする私に反し、小夏の勢いはまだまだ衰えない。


「そのために同居を利用するんだよ。手料理で胃袋掴むとか、お風呂でバッタリっていうラッキースケベを期待するとか、薄着でウロウロしてみるとか」
「発想がベタすぎるよ。私も妄想したけど」
「あとは転んだふりして押し倒すか、いっそ本気で押し倒すか……」
「そこまでは考えなかったわ」


 あからさまなアピール術を伝授され、私は口の端を引きつらせた。

 押し倒すなんて言語道断だ。まあ、薄着でウロウロするのも『服を着なさい』って注意されるだけだろうけど。過保護な聖さんはある意味オカン男子だから。