彼を見やると、長めの前髪がかかる瞳はどことなく厳しさを感じる。敬語になっているし、これはたぶん弁護士様の顔だ。
仕事中は同僚に対しても敬語を使うらしく、私に注意したり諭したりするときにもそうなる。
「直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りではない」
「う、うん?」
「そう例外が定められていますが、今回は養子縁組をしないので六花も傍系血族にはなりません」
難しい単語がつらつらと聞こえてきて、私の頭にはハテナマークが飛び交う。ボウケイってなに?
「そもそも親の再婚相手の連れ子同士は、姻族でも法定血族でもないんです。つまり」
そこで区切った彼が私を見下ろし、蜂蜜色の光が揺らめく瞳と視線が絡まる。
「俺と六花は、結婚もできる間柄だってこと」
「けっ……!」
大きく心臓が飛び跳ね、無意識に手袋をはめた手を口元に当てた。
急に結婚なんてワードが出たからびっくりした! そういえば、連れ子同士も結婚できるんだったよね。義兄妹になるというインパクトが大きすぎて頭から抜けていた。



