「取材はお断りします。ふたりは政治家とはなんら関係のない一般人ですので。嫌がっているのに過度な取材をすれば、名誉・プライバシーなどの人権の侵害に当たりますよ」
毅然と言葉が放たれた瞬間、私はデジャヴュのようなものを感じてはっとした。
そうだ……確か、十二年前もこうして守ってくれた人がいたんだ。その人は、まさか──。
見開いた私の目には、煙たそうにする記者と冷徹さを露わにする聖さんが映る。
「なんですか、あなたは」
「申し遅れました、水簾法律事務所の水篠です。そして、彼女の義兄です」
聖さんが名刺を取り出して渡した途端、記者の顔色がサッと変わる。
「交渉で私に勝てる自信がおありなら、改めて対応しますので出直してください。ないのなら今後一切彼らに近づかないよう、お願いします」
萎縮しつつも言い返す記者と数回やり取りをして、聖さんが完全に論破すると、男性は悔しそうにしながらも去っていった。
あっさり記者を追い払った彼に、父がお礼を言っている。その様子をどこか遠くに感じていると、聖さんが私の腕を優しく掴んで顔を覗き込む。
「六花、大丈夫か?」
心配そうな彼の顔が、少年らしさを残した若い彼のそれと重なる。
温かく、愛しい日々が蘇ると共に目の前が白くなり、意識が遠退いていった。



