「私はもう関係のない人間です。お話できることはなにもありません」
「秘書をされていた頃のお話をお聞きしたいんですよ。筧議員にはパワハラの疑惑も出ているんですが、当時からそういった事実はなかったんでしょうか?」
「もう思い出したくないんです。お引き取りください」
「そう警戒なさらないで。私はあなたの味方です」
完全拒否しているにもかかわらず、暖簾に腕押し状態。めげない記者は、父の陰に隠れる私をまじまじと見てくるのでギクリとした。
「今日は娘さんに会いに来られたんですか? 元奥様は再婚されたとお聞きしましたが……」
立ち入った質問がやまなくて逃げ出したくなる。十二年前にも似たような状況になったことを思い出して、また動悸がしてきた。あのときはどうしたんだっけ。
記憶を引っ張り出そうとしたとき、私たちの隣にタクシーがやってきて停まった。そこから勢いよく降りてきたのは、東京から戻ってきた聖さんだ。
「聖さん……!」
頼もしい彼が来てくれただけで、助かった気分になる。私の口元もわずかに緩んだ。
彼は颯爽と記者の前に立ちはだかり、弁護士モードの冷ややかな視線を突き刺す。



