力強く言い放った彼女の瞳がうっすら揺れるのを見て、私の頬にひと粒の涙が伝った。同時に、臆病になっていた心が奮い立つ。
私たちはただ好きなだけ。それを手放さなくてもいいはずだと、自信を与えてもらえた気がする。
涙声で「ありがとう」と言う私に、アキちゃんは優しく微笑んでハンカチを差し出す。通りすがりの人たちに好奇の視線を向けられても、美味しいコーヒーが冷めても、私の心は迷いが晴れて温かくなっていた。
過去になにがあったのか、真実を聞いてきちんと向き合おう。
ようやくそう決心した私は、アキちゃんと笑顔で別れた。時刻は午後一時になるところ。行きとは違い、しっかりとした足取りで自宅へ向かう。
ところが自宅の前の道を歩いていたとき、こちらに向かってくるひとりの男性に気づいて息を呑んだ。伏し目がちにやってくる彼はこの間の男性と同じ……菅屋さんだ。
もしかして、今日も家に来たの? どうやって場所を調べたのかはわからないが、母に会いに来たんだろうか。一体なんの用事で?
若干警戒してその場に立ち尽くしていると、彼も私の存在に気づいて顔を上げた。数秒見つめ合ったあと、彼の瞳がみるみる大きくなる。



