聖さんが東京へ向かった土曜、私は仕事に没頭し、難しいことは考えずに過ごすことができた。問題は、私も休日である翌日の日曜日。

 聖さんが帰ってくるのは夕方になるらしい。それまで小夏と会おうかと思ったものの、彼女はいとこの結婚式があるとのことで断念した。仕方ないのでひとりで街をぶらぶらするしかない。

 雅臣さんも用事があるそうで出かけてしまい、家にいたら母とふたりになるので否が応でも例の件を聞かずにはいられなくなる。

 しかし、まだ真実を知る勇気が出ないのだ。パンドラの箱を開けたら私たち家族の関係まで壊れてしまいそうな、危うい予感がするから。

 服だけでも明るくしようとパステルカラーのパンツを履き、軽くメイクをして家を出ようとした。

 そのとき、リビングのテレビにまた筧さんが映っているのに気づく。碓氷さんが言っていたように過去の疑惑が取り上げられ、菅屋さんの写真も小さく映っていた。

 思わずテレビから目を背けた直後、キッチンのほうから「六花」と呼ばれた。振り向くと、ハーブの手入れをしていた母がこちらに歩み寄ってくる。