義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~


 俺たちが会うときはいつも菅屋さんが一緒にいた。つまり、同時に俺や父の存在も消えてしまったのだ。


『忘れているならそのほうがいいと思って、六花も覚えていないくらい昔に離婚したって言ってあるわ。つらい記憶を無理に思い出させる必要はないから』


 だからきっと、俺が会いに行っても嫌な思いをさせてしまうだけだろうと、雪乃さんは気を遣ってくれていた。

 しかし、そんなの実際に会ってみなければわからない。もしかしたら、俺だけでも思い出してくれるかもしれないじゃないか。

 これまで一緒に過ごした時間は決して多くはないが、だからこそ大切なもの。それがすべて失われたなどと信じたくなくて、予定通り会いに行こうと決めた。


 そうして、東京とはまったく違う澄んだ空気の中で、俺たちは約一年ぶりに再会した。九歳になった六花は髪も身長も伸び、顔つきは少し大人びてきていて、成長の早さに驚いた。

 妙な緊張感を抱きつつ、雪乃さんの隣で俺をじっと見つめている彼女に歩み寄る。名前を呼ぼうとした瞬間、彼女が口を開く。


「こんにちは。えっと……誰?」


 戸惑いがちに言われたそのひと言は、わずかにあった希望を打ち砕いた。