義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~


 中古の車を手に入れて、ようやく会いに行けると意気込んでいた大学二年の夏。雪乃さんに久々に連絡すると、なぜか第一声で『ごめんなさい、聖くん』と謝られた。


『六花ね……よっぽどショックだったのか、日が経つにつれていつの間にか忘れてしまったみたいなの。お父さんと、それにかかわる記憶を全部』


 ──飛び込んできたのは、耳を疑うような話。俺は呆然として、すぐには言葉を返せなかった。

 まさかと、胸をざわめかせながら確認する。


「俺のことも、ですか?」
『……ええ』


 申し訳なさそうにこぼれた雪乃さんの声が、どこか遠くに聞こえた。

 どうやら六花の症状は解離性健忘症で、中でも特定の人物や自分の家族に関するすべてのことなど、特定のカテゴリーの情報を忘れる系統的健忘というものらしい。

 東京から離れ、雪乃さんもこれまでのことをあえて話題に出さないようにしていたら、いつの間にか菅屋さんにまつわる情報と、彼が逮捕された前後数日間の出来事がまったくわからなくなっていたのだ。

 突然『どうして六花にはお父さんがいないの?』と、本当になにも知らない様子で聞かれて発覚したという。

 東京で過ごしていた記憶はあるのに、六花の中では一緒に暮らしていたのは雪乃さんだけで、菅屋さんと行った場所やしたことなども覚えていないそう。