すると、彼女はじっとこちらを見つめ、自分も俺の前にしゃがむ。
「ひーくんもなにかあったの? 元気ないよ」
見抜かれたことに驚き、目を見張った。同時に、今だけ頭の片隅に追いやられていた母のことを思い出し、気持ちが沈む。
俺は深く息を吐き出し、力なく呟く。
「……俺も、母さんがいなくなっちゃったんだ」
「なんで?」
純粋に理由を聞かれ、死んだから、という答えが喉まで出かかる。
その瞬間に、母は本当に亡くなったのだという事実を不思議と認めることができ、一気に虚無感に襲われた。今になって、ようやく悲しいという感情が込み上げてくる。
勝手に視界がぼやけ、六花の顔がよく見えなくなったとき、小さな身体が俺を抱きしめた。
「じゃあ、一緒にいよう? 六花は、ずっとそばにいるよ」
慰めの優しい声が耳元で響いて、堪えきれずに涙が溢れた。
自分だって、大切な人が突然いなくなったつらさを今まさに味わっているのに、俺を包み込んでくれるなんて。どれだけ優しい子なんだろう。
男のくせに、自分より小さな女の子の前で泣くなんて情けないなと思いながらも、かけがえのない存在を抱きしめ返す。



