しかし、そんな俺が自然体でいられる唯一の女の子がいた。
家族ぐるみでの付き合いがあった夫婦のひとり娘で、俺より十歳も年下。彼女が赤ちゃんのときから会ってはいたが、記憶にあるのはよく遊ぶようになった四歳くらいの頃からである。
彼女たちは東京に住んでいて、ゴールデンウイークや盆、正月などの長期休みに軽井沢の別荘に遊びに来ていた。そちらか、今現在俺たちが暮らしている別荘のどちらかでホームパーティーをすることが多く、両親に付き合わされていた俺は正直面倒でしかなかった。
……彼女がいなければ。
「ひーくん、あそぼ!」
なんの穢れもないビー玉のような目で俺を見上げ、そんなふうに無邪気に誘われると敵わない。当時から天使のように愛らしかった少女──それが六花だ。
ひとりっ子の俺にとって、六花ほど小さな女の子の存在は新鮮で、親戚の妹のよう。両親たちが料理を食べて談笑している間、俺は庭や居間でおもちゃを広げる彼女を興味深く見守るのが常だった。
俺に対して偏見を持ったりしない、ただの〝遊んでくれるお兄ちゃん〟だと認識している六花といるのはとても気楽で、なにより癒される。



