六花とようやく想いが通じ合い、俺の胸はガラにもなく弾んでいた。初めて女性と付き合ったときのような、初々しくてむず痒い感覚を覚える自分に呆れるほど。

 恋人になって数日後、事務所に出勤して玄関に入ったところで、オフィスから興奮気味な声が飛んできた。


「えっ、義妹さんと付き合うことになったんですか⁉」


 藤宮さんの声だ。……俺の話、だよな。

 つい昨日、瀧が『六花ちゃんとはどうなったんだよ』とあまりにもしつこいものだから事実を伝えたのだが、さっそく後悔している。口が軽すぎだろう、弁護士のくせに。

 ここのメンバーは基本仲がよく信頼も厚いので、大抵のことは話せる間柄ではある。とはいえ、人の話を勝手にするなよ。

 目を据わらせて脱力する俺は、タイミングを逃したため、ひとまず玄関の死角でおとなしく話が途切れるのを待つ。

 次に聞こえてきたのは、どこか嬉しそうな瀧の声。


「俺にしてみれば〝やっとかー〟って感じだよ。聖がずっと六花ちゃんを想ってることには気づいてたから」
「だから先生、あんなにモテモテなのに恋人を作らなかったんだ。すご~い、純愛じゃないですか!」


 嬉々としていたふたりだが、「あ」と声をそろえたあと押し黙った。