「え、この人……」
この間、私たちの家の前でうろついていた男性によく似ている。写真のほうが当然ながら若いし、頬の辺りもふっくらしていて健康的だが、面影はある。
どこか懐かしく感じる優しげな顔立ちの彼を見つめていると、再びこめかみにズキッとした痛みが走る。片手でそこを押さえつつ、碓氷さんに頼み込む。
「あの、もし菅屋さんのことを知っていたら、詳しく教えてくれませんか?」
「いいけど、大丈夫?」
心配そうにする彼女に、迷いなく「はい」と頷いた。私の脳がなにかを思い出そうとしている、そんな気がするのだ。
碓氷さんは前を向き、運転を続けながら口を開く。
「菅屋は筧の元秘書で、彼らと繋がりのある会社社長から数百万の賄賂を受け取ったとして有罪になった。筧にも容疑はかかったんだけど、菅屋が勝手にしたことだっていう主張が認められたのよ。確か十二年前だったかしら」
「筧の元秘書……」
今も収賄疑惑の渦中にいる人物の名前が出てきて眉をひそめた。しかしそれより、にわかには信じがたい考えが脳裏をよぎる。
政治家の汚職事件となったら、きっとメディアに大きく取り上げられただろう。一瞬流れたあの映像は、そのときのもの?



