呼吸が浅くなり、背中に冷や汗を掻いている。まだ痛む頭を抱えたまま立ち尽くしていたとき、コンビニの駐車場のほうから声がした。
「六花さん?」
勢いよく振り向くと、ビニール袋を提げた碓氷さんが怪訝そうにこちらを見ていたので、私は驚いて目を見開いた。
「碓氷さん……!」
「どうしたの、大丈夫? 顔色が悪い」
歩み寄って背中にそっと手を当てる彼女は、とても心配してくれているようだ。きっちりした服装や時間からして仕事帰りなのだろうが、こんなところで会うとは。
「病院に行く?」
「いえ、そこまででは……。私、会社がすぐそこで、車を置いてあるので少し休めばよくなると思うんです」
「よくならなかったらどうするの。無理して運転するのは危ないわよ」
クールな彼女が、聖さん以外に感情を露わにしているのは珍しい気がする。こういうときはちゃんと気遣ってくれる人なんだとわかって、なんだか心がほっとした。
碓氷さんは少し考えを巡らせたあと、私の肩を抱いてパープルの軽自動車のほうへ歩き出す。
「仕方ないから回復するまでついていてあげる。私はコンビニに車を停めておくわけにいかないから、とりあえず乗って」
助手席に促され、断り切れなくなった私はお言葉に甘えることにした。



