義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~


 数日後、先日残業した分、定時より一時間早い午後五時に上がった私は、会社を出て瞠目した。

 サイレンが鳴り響く中、道路を挟んで向かいの住宅地で黒煙が上がっていて、火元である一軒家の窓から炎が見える。消防車が駆けつけて間もないようで、消火作業が始まっていた。

 社員の人たちが火事だと騒いでいたので知ってはいたとはいえ、実際に目の当たりにするとぞっとした。不幸中の幸いで風はなく、燃え広がってはいないようだが火の勢いは強く感じる。

 怪我人が出ていないか心配だが、私にできることはなにもない。これから近くの眼科へ行く予定でもあるため、火事を気にしつつそちらへ足を向けた。

 眼科にはコンタクトを買うため定期的に通っていて、今回から会社から徒歩五分の場所にある眼科を利用することにした。仕事を終えてすぐに、会社の駐車場に車を停めさせてもらったまま行けるので都合がいいのだ。

 しかしこの日はわりと混んでいて、すべての診察が終わるまで一時間もかかってしまった。夕飯の準備は母にお願いしておいてよかったと思いながら、暗くなってきた道を早歩きで会社へと戻る。