「ゴールデンウイークね。せっかく六花も連休があるのに、また家族サービスで終わりそうだな」
どうやら私の話は耳に入っていたらしい。表情もいつもと変わらず穏やかだし、あの冷たい瞳は私の見間違いだったようにも思えてくる。
さっきの政治家のニュースは弁護士だから気になっただけかもしれない。そう深く考えずに食事を続けていると、聖さんはやや申し訳なさそうに言う。
「来週の休みは東京へ行かなきゃいけないんだ。ふたりで過ごせなくて残念だけど、お土産買ってくるからいい子にしてて」
「また子供扱いする。お土産がなくても、聖さんが帰ってきてくれるだけで十分だよ」
少し口を尖らせると、彼は意地悪っぽく口の端を持ち上げる。
「東京限定のガトーショコラ、いらないの?」
「聖さんとガトーショコラがあれば十分です!」
大好物のスイーツに即つられる私に、聖さんはおかしそうに笑った。
このなにげない幸せな日常を、ずっとずっと送り続けていきたい。



