四月も中旬になり、軽井沢ではようやく桜の蕾が膨らんできた。東京と比べると一カ月近くもずれがあり、満開になるのは毎年ゴールデンウイーク頃だ。

 私はハースキッチンで新入社員として働き始め、毎日クタクタになっている。

 栄養士として採用されたが、献立作成を行えるのはお弁当を作っている工場での作業をひと通り経験してからとなっている。

 洗浄作業から始まり、下処理や調理、盛り付けなど、現場を知ることも献立作成のためにとても大事なのだ。

 食べる人のためだけではない。現場の人たちにも調理のしやすい献立にするよう気遣いできてこそ、一人前の栄養士なのだろうと思っている。

 今日は盛り付けに入っていて、レーンに流れてくるお弁当の容器に手際よくおかずを詰めていく。

 作業着と帽子、マスクを身に着け、目だけ出した姿で黙々とこなしていると、ここでの教育係である女性の先輩社員が声をかけてくる。